結論:債権譲渡登記は「法人が」「第三者に譲渡を主張するため」の登記。取引先への通知とは別の手続
債権譲渡登記は、法人が売掛金などの金銭債権を譲渡したことを、取引先(債務者)以外の第三者に主張できるようにする登記です。法務省の公式ページ(2026年11月3日取得)によると、譲渡人は法人だけで、登録免許税は1件7,500円(債権が5,000個以下の場合)です。
登記は、取引先の関与なしにできます。誰でも取れる証明書には、取引先の名前は載りません。ただし、登記があること自体と、譲受人(ファクタリング会社)の名前は、誰でも調べられます。
費用を誰が負担するかは、法務省のページに決まりがありません。契約書で確かめてください。
| 知りたいこと | 公式ページの答え |
|---|---|
| 何のための登記か | 債務者以外の第三者(二重の譲受人、差押債権者、破産管財人など)に、債権譲渡を主張するため |
| 誰が使えるか | 譲渡人は法人だけ。個人事業主は対象外 |
| 誰が申請するか | 譲渡人と譲受人が共同で申請(代理人による申請も可) |
| 登録免許税 | 1件7,500円(債権5,000個以下)。5,000個を超えると15,000円 |
| どこで扱うか | 東京法務局民事行政部債権登録課が、全国の債権譲渡登記を扱う |
| 取引先に知られるか | 登記だけでは債務者に主張できない。誰でも取れる証明書に債務者名は載らない |
| 抹消 | 譲渡人と譲受人が共同で申請。登録免許税は1件1,000円 |
| 証明書 | 登記事項証明書(限られた人)、登記事項概要証明書と概要記録事項証明書(誰でも) |
この記事で分かることは次のとおりです。
- 債権譲渡登記と、民法の通知・承諾の違い
- 公式の金額(登録免許税、証明書の手数料)と、公式に金額がないもの
- 申請先、受付時間、必要書類
- 登記事項証明書と概要記録事項証明書の違い、取り方
- 取引先に知られる範囲
- 完済・買戻しのあとの抹消登記
- 登記を求められたときの、金融庁の注意喚起と契約書の確認項目
個別の契約や登記の判断は、司法書士・弁護士に相談してください。
債権譲渡登記とは:民法の通知・承諾との違い
民法第467条は、債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をするか、債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗できないと定めています。この通知・承諾が確定日付のある証書でなければ、債務者以外の第三者には対抗できません(e-Gov法令検索、2026年11月3日取得)。
債務者以外の第三者とは、債権の二重譲受人、差押債権者、破産管財人などです(法務省)。つまり、同じ売掛金が二重に譲渡された場合や、差し押さえられた場合に、譲受人が自分の権利を主張するための手続が対抗要件です。
法人がする金銭債権の譲渡については、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(以下「特例法」)が、この第三者対抗要件を登記で備える特例を定めています。これが債権譲渡登記です。
法人が多数の債権を一括して譲渡するとき、全債務者に通知する手続と費用の負担が重いため、設けられたと法務省は説明しています。
| 場面 | 必要な手続 | 根拠 |
|---|---|---|
| 債務者(取引先)に「譲受人に払ってほしい」と主張する | 譲渡人か譲受人が、債務者へ登記事項証明書を交付して通知する。または債務者の承諾 | 特例法第4条第2項、法務省 |
| 債務者以外の第三者に譲渡を主張する | 債権譲渡登記(法人の場合)。登記の日付が確定日付になる | 特例法第4条第1項 |
| 債権が実際に存在することを示す | 登記では証明されない | 法務省Q&A |
登記と、民法による確定日付のある通知の優劣は、備えた時の先後で決まります。登記の効力が常に優先するわけではありません(法務省Q&A)。
また、債権譲渡登記は、債権の存在や譲渡の有効性を証明するものではありません。申請に、債権があることや譲渡があったことを示す書面の添付が要らないためです(法務省Q&A)。
ファクタリングには、売掛先の承諾が要らない2社間と、原則として承諾が要る3社間があります(ビートレーディングの公式ページ)。承諾を取らずに第三者対抗要件を備える方法として、法人は登記を使えます。
ファクタリング会社が登記を求める理由は、公式ページには書かれていません。法務省の説明では、登記の効果は、債務者以外の第三者に対する対抗要件にとどまります。
2社間と3社間の違いは、ファクタリングとは?仕組み・手数料・審査・融資との違いで整理しています。
個人事業主は債権譲渡登記を使えない
法務省は、債権譲渡登記の譲渡人は法人のみに限られると説明しています。特例法第4条第1項も、「法人が債権を譲渡した場合」と書いています。法人でない者が債権を譲渡するときは、原則どおり、確定日付のある証書による債務者への通知か、債務者の承諾が第三者対抗要件になります(法務省)。
個人事業主が2社間ファクタリングで「債権譲渡登記が必要」と言われたときは、何の手続を指しているのかを、業者に確かめてください。契約書の記載の確認も欠かせません。
個人事業主の注意点は、ファクタリングは個人事業主も使える?仕組み・費用の見方・注意点で整理しています。
費用:公式の金額と、公式に金額がないもの
公式の金額
法務省のページと法令に書かれている金額は次のとおりです。証明書の手数料は、窓口または郵送で請求する場合の額です。
| 手続 | 金額 | 出どころ |
|---|---|---|
| 債権譲渡登記の申請(債権の個数が5,000個以下) | 1件につき7,500円 | 法務省、租税特別措置法第84条の6 |
| 同(債権の個数が5,000個を超える) | 1件につき15,000円 | 法務省、登録免許税法別表第一第九号 |
| 存続期間の延長登記 | 1件につき3,000円 | 法務省 |
| 抹消登記 | 1件につき1,000円 | 法務省、登録免許税法別表第一第九号 |
| 登記事項証明書(個別事項証明) | 債権1個につき500円 | 法務省 |
| 登記事項証明書(一括証明) | 500円+債権の個数が1個を超えるごとに200円(2個で700円、5個で1,300円) | 法務省 |
| 登記事項概要証明書 | 1通300円 | 法務省 |
| 概要記録事項証明書 | 1通300円(50枚を超える分は加算) | 法務省 |
| 司法書士に頼むときの報酬 | 使った公式ページに金額の記載なし | - |
登録免許税は、収入印紙などで納めます。オンライン申請では、歳入金電子納付システムが使えます(法務省)。証明書をオンラインで請求すると、手数料が安くなります。たとえば登記事項概要証明書は、1通250円です(窓口交付・オンライン交付の場合)。
譲渡する債権が多数あっても、当事者(譲渡人・譲受人)、登記原因、その日付が同じなら、1件の申請で一括して登記できます。法務省は、1件で登記できる債権の個数を当面10万個以下としています。請求書が何枚でも、条件が同じで債権の個数が5,000個以下なら、登録免許税は1件分の7,500円です。
公式の金額だけを足した例です。債権譲渡登記を1件(7,500円)、完済後に抹消登記を1件(1,000円)申請すると、8,500円です。登記の状況を確かめるために登記事項概要証明書を1通取れば、窓口・郵送請求で300円が加わります。司法書士の報酬は含みません。
誰が負担するか
法令では、登記は譲渡人と譲受人が共同して申請すると決まっています(法務省)。費用を誰が負担するかを定めた記載は、確認した法務省のページにはありませんでした。契約で決まるため、契約書の費用の欄を読みます。
ファクタリング会社の公式ページでも、登記の扱いは分かれています。QuQuMo onlineは、当社との直接の2社間ファクタリングなので取引先への通知や登記は一切不要と書き、特長にも「債権譲渡登記の設定不要」を挙げています。
株式会社No.1は、ご利用条件に「債権譲渡登記の設定 登記留保可能」と書いています。登記を保留できるという表記で、登記費用など手数料以外の費用は一切かからないとも書いています。株式会社No.1は会社名であり、順位を示すものではありません。
申請の流れと必要書類
申請先と受付
債権譲渡登記を扱う登記所(債権譲渡登記所)は、東京法務局民事行政部債権登録課です。全国の債権譲渡登記の事務を取り扱うため、会社の本店がどこにあっても、申請先は同じです(法務省)。
所在地は〒165-8780 東京都中野区野方1丁目34番1号(東京法務局中野庁舎の3階)です。不動産登記や商業・法人登記を扱う東京法務局本局(千代田区九段南)とは場所が違います。債権登録課は、不動産登記と商業・法人登記は扱っていません(東京法務局、更新日2024年8月8日)。
| 項目 | 公式ページの記載(2026年11月3日取得) |
|---|---|
| 提出方法 | 書面(窓口に持参、または郵送)、事前提供方式、オンラインの3つ |
| 窓口の受付時間 | 午前8時30分から午後5時15分。土日祝日と12月29日〜1月3日は受付なし |
| 窓口対応時間の案内 | 東京法務局は、午前9時から午後5時の窓口対応時間内の利用をお願いしている |
| 郵送(送付申請) | 登記所が受け取った日の後の最初の執務日に受付 |
| 処理時間 | 原則、受付日に完了。標準的な申請で、窓口の受付からおおむね30分〜1時間 |
| 混み合う時期 | 月末(特に3月、6月、9月、12月)は混雑するため、月末を避けることを勧めている |
登記申請に、補正の制度はありません。登記申請書などに不備があると、申請は却下され、提出した書類は返却されません。取下書を添付しておけば、不備があっても却下されず、書類が返却されます(法務省Q&A)。
手順
公式ページの内容を、申請の順に並べると次のとおりです。
- 契約書で、登記をするかどうか、譲渡する債権の範囲、存続期間、費用の負担を確かめる
- 譲渡人(売掛金を持つ会社)と譲受人(ファクタリング会社)が共同で申請する。代理人による申請もできる
- 登記申請書、添付書面、申請データ(譲渡する債権を特定する情報)を用意する
- 登録免許税を、収入印紙などで納める
- 債権譲渡登記所へ、窓口・郵送・オンラインのいずれかで提出する
- 受付後、原則その日に処理される。登記が完了すると、登記番号などを記載した通知書が譲受人あてに送られる(代理人が申請した場合は代理人あて)
登記には存続期間が記録されます。法律の上限は、譲渡に係る債権の債務者がすべて特定している場合が50年、それ以外が10年です。特別の事由があれば、超えて定められます(特例法第8条第3項)。存続期間を延ばす延長登記もあります。
必要書類
書面で申請するときの、債権譲渡登記の添付書面は次のとおりです。代表者の資格証明書、印鑑証明書などは、作成後3か月以内のものに限られます。
| 書類 | 必要になる場合 | 備考 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | いつも | 本人申請と代理申請で様式が違う |
| 申請データ(XML形式) | 債権譲渡登記の申請(延長・抹消は不要) | CD-Rなどに記録して提出。オンラインは別の方法 |
| 譲渡人の代表者の資格証明書(登記事項証明書) | 原則として必要 | 作成後3か月以内。省略できる場合あり |
| 譲渡人の代表者の印鑑証明書(登記所が作成したもの) | 必要 | 作成後3か月以内 |
| 譲受人の代表者の資格証明書(登記事項証明書) | 譲受人が法人の場合 | 作成後3か月以内 |
| 譲受人の住所を証する書面(住民票の写し) | 譲受人が自然人の場合 | |
| 代理権限証書(委任状など) | 代理人が申請する場合 | 官庁や公署が作成したものは作成後3か月以内 |
| 取下書 | 任意 | 不備があったときに書類が返却される |
| 特別の事由を証する書面 | 存続期間が50年(債務者不特定の債権を含むと10年)を超える場合 |
代表者の資格証明書は、添付を省略できる場合があると、法務省のページに書かれています。条件は同ページの案内で確かめてください。
譲渡する債権は、申請データに、原債権者、債務者、債権の種類、債権発生原因、債権の発生年月日、債権額などを記録して特定します(法務省Q&A)。
オンラインで申請するには、登記・供託オンライン申請システムの利用登録と、債権譲渡登記の「申請人プログラム」が要ります。電子署名が必須で、電子証明書は氏名と住所を確認できるものに限られます(法務省)。
登記事項証明書と概要記録事項証明書の違い
債権譲渡登記の内容を示す証明書は3種類あります。法務省は、債務者のプライバシーを守るため、情報の内容によって開示の方法を分けていると説明しています。
| 証明書 | 載る内容 | 請求できる人 | 請求先 | 手数料(窓口・郵送) |
|---|---|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 個々の債権に関する登記事項の全部(債務者が特定されていれば債務者名も載る) | 譲渡人・譲受人、債務者、差押債権者など法律で限られた人 | 債権譲渡登記所(東京法務局民事行政部債権登録課) | 個別:債権1個につき500円 |
| 登記事項概要証明書 | 譲渡人の商号・本店等、譲受人の氏名等、登記原因とその日付、存続期間、登記番号、登記年月日、債権の総額 | 誰でも | 債権譲渡登記所 | 1通300円 |
| 概要記録事項証明書 | 譲渡人の商号・本店等、譲受人の氏名等、登記番号、登記年月日 | 誰でも | 全国の商業登記所・不動産登記所、法務局証明サービスセンター | 1通300円 |
登記事項概要証明書と概要記録事項証明書には、債務者名など、譲渡された債権を特定する事項は載りません。どちらも誰でも請求できます(法務省Q&A)。
登記事項証明書の請求を限っている理由を、法務省は、債務者のプライバシーに関する情報や、譲渡人の営業秘密・事業戦略に関わる情報が載るためと説明しています。
請求の方法
証明書の請求方法は、窓口、郵送、オンラインの3つです(法務省)。窓口と郵送では、申請書に必要事項を書き、手数料の額の収入印紙(登記印紙も使えます)を貼って、請求先の登記所に出します。
郵送の場合は、手数料のほかに、返信用の封筒と切手が要ります。オンラインで請求すると、手数料が安くなります。請求先は、登記事項証明書と登記事項概要証明書が債権譲渡登記所、概要記録事項証明書が全国の商業登記所・不動産登記所などです。
登記事項証明書を取れる人と書類
登記事項証明書は、次の人だけが請求できます(法務省)。
- 譲渡人または譲受人(登記の当事者)
- 譲渡された債権の債務者、債権の取得者
- 差押債権者、仮差押債権者、これらの債権を目的とする質権の取得者
- 上記の人の財産の管理・処分をする権利を持つ人(破産管財人など)
- 譲渡人の使用人
会社が譲渡人として請求するときは、申請書に、代表者の資格証明書、登記所が発行した印鑑証明書(作成後3か月以内)を添付します。代理人が申請するなら、その権限を示す書面も要ります。使用人が請求するときは、社員証の写し(原本の提示が必要)などを添付します。
申請書は、登記番号が分かっていれば「登記番号・通番指定検索用」、分からなければ「当事者指定検索用」を使います。
自社の登記を確認したいとき
自社名で登記が残っていないかを確かめたいときは、誰でも請求できる証明書が使えます。債権譲渡登記所の登記事項概要証明書は、登記が完了した後すぐに交付を受けられます。
概要記録事項証明書は、債権譲渡登記所から譲渡人の本店所在地の登記所へ通知され、概要ファイルに記録された後に交付されます。登記の直後は、まだ出ない場合があります(法務省Q&A)。
概要記録事項証明書の内容は、指定法人が運営する「登記情報提供サービス」でも、インターネットで確かめられます(法務省)。登記事項証明書と登記事項概要証明書の内容は、このサービスでは確認できません。
取引先に知られるか:誰が何を調べられるか
法務省は、債権譲渡登記では、第三者対抗要件と債務者対抗要件を備える方法が分けられていると説明しています。第三者対抗要件は、債務者を関与させずに、譲渡人と譲受人の共同申請で備えられます(法務省Q&A)。
登記が完了したときの通知書の宛先は、譲受人です。抹消登記の場合は譲渡人です。取引先に通知書が送られるとは、法務省のページに書かれていません。
| 見る人 | 取れる証明書 | 取引先(債務者)の名前 |
|---|---|---|
| 誰でも | 登記事項概要証明書、概要記録事項証明書 | 載らない |
| 当事者、債務者など限られた人 | 登記事項証明書 | 載る(債務者として特定されている場合) |
ただし、登記があること自体は、誰でも調べられます。概要記録事項証明書は誰でも請求でき、譲渡人の商号と譲受人の氏名等が載るためです。法務省のQ&Aは、債権を譲り受けようとする人が、譲渡人の概要記録事項証明書で先に行われた登記の有無を調べる方法を説明しています。
誰でも請求できるため、取引先や金融機関が、あなたの会社名で請求すれば、債権譲渡登記の有無と譲受人の名前は分かる仕組みです。株式会社No.1の公式ページも、登記情報が金融機関などの第三者に知られる可能性を否定できないと書いています。
取引先に伝わる場面は、別にあります。譲渡人か譲受人が、債務者へ登記事項証明書を交付して通知したときです。このとき、譲渡と登記を債務者にも主張できます(特例法第4条第2項)。債務者本人も、登記事項証明書を請求できます。
どんなときに譲受人が通知するかは、公式ページには書かれていません。契約書で、通知する条件を確かめてください。
なお、登記原因(たとえば担保目的の譲渡なら「譲渡担保」)は、誰でも取れる登記事項概要証明書に載ります(法務省Q&A)。
抹消登記:完済・買戻しのあとにやること
特例法第10条は、次の事由があるとき、譲渡人と譲受人は債権譲渡登記の抹消登記を申請できると定めています(e-Gov法令検索)。
- 債権の譲渡が効力を生じないこと
- 債権の譲渡が、取消し・解除その他の原因で効力を失ったこと
- 譲渡に係る債権が消滅したこと
完済や買戻しがこのうちのどれに当たるか、登記原因をどう書くかは、公式ページには書かれていません。司法書士に確認してください。
抹消の申請は、判決による場合を除き、譲渡人と譲受人が共同して行います(法務省)。譲渡人だけでは申請できないため、ファクタリング会社の協力が要ります。
| 項目 | 公式ページの記載 |
|---|---|
| 登録免許税 | 1件につき1,000円 |
| 添付書面(譲受人側) | 譲受人の代表者の資格証明書(法人の場合)、譲受人の代表者の印鑑証明書(法人は登記所が作成したもの、自然人は市町村長が作成したもの) |
| 添付書面(譲渡人側) | 譲渡人の代表者の資格証明書(登記事項証明書) |
| 書類の期限 | 代表者の資格証明書と印鑑証明書は、作成後3か月以内 |
| 一部だけ抹消する場合 | 登記に債権が数個記録されていて、一部の債権だけを抹消するときは「一部抹消登記」。様式は法務省のページにある |
| 完了後 | 抹消登記が完了すると、通知書が譲渡人あてに送られる(数人いる場合は1人あて) |
登記が完了したあとに、譲渡された債権に変更や誤りが見つかっても、変更や更正の登記はできません。変更後の債権を特定して、新たに債権譲渡登記を申請します(法務省Q&A)。
契約書では、抹消の時期、申請への協力の義務、費用の負担を確かめます。抹消の費用は、登録免許税1,000円のほか、司法書士に頼む場合の報酬がかかることがあります。
登記を求められたときの注意:金融庁の注意喚起
金融庁のページ(2026年11月3日取得)は、ファクタリングを、事業者が持つ売掛債権等を期日前に一定の手数料を取って買い取るサービスと説明しています。法的には、債権の売買(債権譲渡)契約です。
一方で、ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融の存在も書かれています。実態が貸付けと同じ機能を持つ取引は、貸金業に該当するおそれがあります。
金融庁が、偽装ファクタリングの疑いや、貸金業に該当するおそれがある例として挙げているのは、次のようなものです。
- 債権の買取代金が、債権額に比べて著しく低額である
- 債権の回収が売主に任され、売主が集金できなかったときに、買い戻す・自分の資金で支払う、とされている
契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」と書いてあっても、経済的な実態で判断されます。貸金業を営むには、財務局または都道府県の登録が必要で、無登録営業は刑事罰の対象です。登録の有無は、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で調べられます。
法務省は、債権譲渡登記が債権の存在や譲渡の有効性を証明するものではないと説明しています。金融庁は、貸金業に当たるかを、契約書の形式ではなく実態で判断するとしています。登記があるかどうかだけで、取引の中身が決まるとは、どちらの公式ページにも書かれていません。
手数料以外の費用(登記費用など)の見方は、ファクタリングの手数料に相場はない?手取りで比べる計算と見積もりの見方にまとめています。
少しでも心配があれば、金融庁は、弁護士に相談することを勧めています。相談窓口として、金融庁 金融サービス利用者相談室、警察(#9110)、日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センター、消費者ホットライン(188)が挙げられています。
契約前のチェックリスト
- 譲渡人は法人か(個人事業主は債権譲渡登記を使えない)
- 登記をするのか、しないのか。登記を留保する場合は、いつ、どんな条件で行うのか
- 登記の申請者、司法書士に頼むのは誰か、報酬と登録免許税(1件7,500円)を誰が負担するか
- 登記の存続期間と、延長するときの費用(延長登記は1件3,000円)
- 譲受人が取引先へ登記事項証明書を交付して通知する条件(どんなときに通知するか)
- 完済・買戻しのあとの抹消登記の時期、申請への協力義務、費用の負担(登録免許税は1件1,000円)
- 業者が貸金業の登録を受けていないか(登録貸金業者情報検索サービスで確認)
- 買取代金が債権額に比べて著しく低くないか、買い戻しや自己資金での支払いの定めがないか
- 手数料以外の費用(登記費用、司法書士報酬、証明書の手数料など)が、見積書に載っているか
契約書の読み方に不安があれば、弁護士か司法書士に相談してください。
よくある質問とまとめ
債権譲渡登記の費用はいくらですか
登録免許税は、債権譲渡登記が1件7,500円(債権5,000個以下)、延長登記が3,000円、抹消登記が1,000円です。証明書は1通300円からです。司法書士の報酬と費用の負担者は、公式ページに決まりがなく、契約書で確かめます。
個人事業主でも債権譲渡登記はできますか
できません。法務省は、譲渡人は法人のみに限られると説明しています。「登記が必要」と言われたら、何の手続を指すのか、業者に確かめてください。
債権譲渡登記をすると取引先に知られますか
登記は取引先の関与なしにでき、誰でも取れる証明書に取引先の名前は載りません。ただし、登記があること自体と譲受人の名前は、誰でも調べられます。譲受人が登記事項証明書を渡して通知したときに、取引先にも譲渡を主張できます。
登記事項証明書と概要記録事項証明書は何が違いますか
登記事項証明書は債権ごとの全部の内容が載り、当事者や債務者など限られた人だけが請求できます。概要記録事項証明書は、譲渡人・譲受人などの概要だけが載り、誰でも請求できます。
債権譲渡登記の抹消はどうしますか
譲渡人と譲受人が共同で申請します。登録免許税は1件1,000円です。完済や買戻しのあとにいつ、誰の負担で行うかは、契約書で確かめてください。
まとめ
債権譲渡登記は、法人がする債権譲渡を、取引先以外の第三者に主張するための登記です。登録免許税は1件7,500円(債権5,000個以下)、抹消は1,000円で、譲渡人は法人に限られます。
登記は取引先の関与なしにでき、誰でも取れる証明書に取引先名は載りません。ただし、登記の有無と譲受人名は誰でも調べられます。
費用の負担、登記の留保、取引先への通知の条件、抹消の時期は、ファクタリング会社と契約書ごとに違います。登記を求められたら、契約書でこれらを確かめ、金融庁の注意喚起にある偽装ファクタリングの例に当たらないかも見てください。個別の判断は、司法書士・弁護士に相談してください。