結論:リバースチャージは全員の申告ではありません
国税庁の整理では、海外の事業者がネットで提供するサービスは「電気通信利用役務の提供」として国内取引になり、消費税がかかります。事業者向けは国内の事業者が申告・納税し(これがリバースチャージ)、消費者向けは海外の事業者が申告・納税します。
リバースチャージの申告が実際に必要になるのは、事業者向けの役務を受けた課税事業者のうち、一般課税で課税売上割合が95%未満の課税期間などに限られます。免税事業者や簡易課税などでは申告が不要です。
登録国外事業者制度は2023年9月30日で廃止され、インボイス制度に移りました。多くの個人事業主・小さな会社にとって、実際に見るのは海外ベンダーの請求書に日本の消費税と登録番号が載っているかです。
この記事では、請求書の3つの分け方、リバースチャージが関係する条件、登録番号の調べ方、サブスクの勘定科目、保存までを順に説明します。個別の判断は税理士や税務署にご確認ください。内容は2026年10月17日時点で確認した国税庁などの公開情報に基づきます。
まず請求書の見方を3つに分けて考える
手元の請求書や契約について、次の3点を順に見ると整理しやすくなります。
- 日本の消費税が載っているか:海外の事業者が日本の消費税を請求書に載せているかを見ます。
- 「T+13桁」の登録番号があるか:適格請求書発行事業者であれば、登録番号が請求書に記載されます。
- 国税庁の区分で、事業者向けか消費者向けか:国税庁の用語では「事業者向け電気通信利用役務の提供」とそれ以外(消費者向け)に分かれます。どちらに当たるかで、申告・納税する人と控除の要件が変わります。
①と②は書類を見れば分かります。③は、サービスの性質や取引条件で決まるため、この記事では個別のサービスについて断定しません。
あなたが免税事業者なら、リバースチャージの申告は不要です。課税事業者の場合は、後述の「リバースチャージが関係するのはどんなとき」で自分の課税方式を確かめてください。
「電気通信利用役務の提供」とは
国税庁は、電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供」と位置付けています。
その役務の提供が国内の事業者・消費者に対して行われるものは、国内、国外いずれから行われるものも国内取引として消費税が課税されます(国税庁タックスアンサーNo.6118)。平成27年10月1日以後の取引からこの扱いになりました。
ですから、海外の会社が運営するネットサービスの利用料も、消費税の対象になりえます。「海外の会社だから消費税は関係ない」とは言えません。
なお、プラットフォーム課税により、令和7年4月以降は特定プラットフォーム事業者が申告・納税する場合があります。
消費者向けと事業者向けの違い
国税庁Q&A問103-3などに基づく整理は、次の表のとおりです。
| 区分 | 定義 | 申告・納税する人 | 仕入税額控除の要件 |
|---|---|---|---|
| 事業者向け | 役務の性質または取引条件等から、受ける者が通常事業者に限られるもの | 国内の事業者(特定課税仕入れ。リバースチャージ方式) | 適格請求書の保存は不要。一定の事項を記載した帳簿のみの保存で足りる |
| 消費者向け(それ以外) | 事業者向け以外 | 役務を提供する国外事業者 | 国外事業者から交付を受けた適格請求書の保存が必要 |
ChatGPTなどのサブスクがどちらに当たるかは、国税庁の定義だけでは断定できません。各社の請求書の表示と、税理士の判断で確かめてください。
一方で、各社の公式ヘルプが「日本の消費税10%を請求書に載せる」と案内している事実はあります。次の登録番号の節で紹介します。
リバースチャージが関係するのはどんなとき
国税庁には経過措置があります。一般課税かつ課税売上割合が95パーセント以上の課税期間、または簡易課税制度が適用される課税期間は、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされ、申告に含めなくてよいとされています。この場合は、仕入税額控除のみを行うこともできません。
免税事業者は消費税の確定申告等を行う必要がなく、特定課税仕入れをしても申告は不要です。
したがって、申告が必要になるのは、事業者向けの役務を受けた課税事業者のうち、上記に当たらない課税期間です。
2割特例については、国税庁のページに令和8年9月30日までと書かれており、この確認日時点ではその日付を過ぎています。個人事業者の3割特例は令和9年・令和10年の課税期間と書かれています。自分の課税期間に使えるかは、税務署や税理士にご確認ください。
登録国外事業者制度は廃止され、インボイス制度に移りました
登録国外事業者制度は、国外事業者が提供する消費者向けの役務について、買い手の仕入税額控除に使われていた仕組みです。国税庁によれば、令和5年9月30日をもって廃止され、インボイス制度に移行しました。
令和5年9月1日時点で登録国外事業者で、取消しの届出書を提出していない事業者は、令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされました。
令和6年3月31日までは、登録国外事業者の5桁の番号を登録番号として記載できる経過措置がありましたが、すでに終わっています。
今、海外ベンダーに確認するのは、請求書に「T+13桁」の登録番号があるかどうかです。
登録番号の調べ方と、インボイスの記載事項
国税庁の特設サイトでは、請求書に限らず、所定の事項が記載された領収書や納品書などもインボイスになるとされています。記載事項は次のとおりです。
- 売手の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 10%・8%それぞれの対象となる対価の総額及び適用税率
- 10%・8%それぞれの消費税額等
- 交付先である相手方の氏名又は名称
登録番号は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで「T+13桁」の番号を入力すると確認できます。
見るのは、名称が請求書の発行元と一致するかです。登録年月日より前の請求書が適格請求書に当たるかは、個別に確認してください。自分がインボイス登録をする場合の屋号の扱いはインボイス登録と屋号、書式は請求書の書き方で扱っています。
適格請求書がないときの扱い
国税庁によれば、インボイスがない仕入れは、原則として仕入税額控除ができません。ただし、簡易課税制度や2割特例・3割特例を使うと、受け取ったインボイスを保存しなくても仕入税額控除を受けられます。
消費者向けの海外サービスで適格請求書がない場合、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れの経過措置は使えません。一方、少額特例は使えます。これは一定規模以下の事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行う税込1万円未満の課税仕入れについて、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で控除できる経過措置です(Q&A問103-3)。
事業者向けの役務なら、適格請求書の保存は必要ありません。自分の契約がどちらに当たるかが、ここでも出発点になります。
主なサービスの登録番号と請求書の出し方
各社の公式ヘルプに書かれている範囲を表にします。ほかのサービスの登録状況は確認していません。登録年月日などは、ご自身で国税庁の公表サイトに番号を入れて確認してください。
| サービス | 登録番号 | 公式ヘルプなどの記載 |
|---|---|---|
| OpenAI OpCo, LLC | T3700150133253 | 公式ヘルプが登録番号を明記。日本の消費税の適用開始はヘルプでは2025年1月1日 |
| Anthropic, PBC | T7700150134388 | 公式ヘルプが明記。日本の消費税10%は2026年4月1日から |
| Zoom Communications, Inc. | T6700150118763 | 公式ヘルプが明記。2023年10月1日以降、販売先が日本の請求書に記載 |
| Canva | 確認できず | 公式ヘルプを直接取得できず、登録番号の記載は確認できていません |
Canvaについては、公式ヘルプのページを直接取得できなかったため、登録番号や請求書の表示は確認できていません。Canvaのヘルプセンターと手元の請求書で確認してください。
各サービスの詳細は、ChatGPT、Claude、Canva、Zoomの個別記事で説明しています。Amazonの例はAmazonの適格請求書をご覧ください。
サブスクの勘定科目と経費の考え方
国税庁の確定申告書等作成コーナーのよくある質問に載っている説明を、表にまとめます。
| 科目 | 国税庁の説明(抜粋) |
|---|---|
| 通信費 | 事業用として使用した電話料、切手代、電報料など |
| 広告宣伝費 | 新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどの広告費用、チラシ、折込み広告の費用など |
| 消耗品費 | 帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費など |
| 雑費 | 事業上の費用で他の経費に当てはまらない経費 |
いずれの説明にも、AIサービスやSaaSの名指しはありません。どの科目を選ぶかは用途に応じた選択肢で、国税庁の案内から「正解の科目」は断定できません。迷ったら顧問税理士や税務署にご相談ください。
一度決めたら同じ扱いにそろえると集計が楽になる、というのは運用上の工夫であり、制度の決まりではありません。経費になるか、按分が必要かは経費になるもの・ならないもので解説しています。記帳の手間を減らしたい場合は、会計ソフトを使うのも一つの方法です。
請求書・領収書データの保存
海外サービスの請求書や領収書は、ウェブ上で確認・ダウンロードする電子取引データにあたります。国税庁は、紙でやりとりしていれば保存が必要な書類に相当するデータを保存するよう求めています。ファイル形式は問われず、PDFやスクリーンショットでも構いません。
国税庁が示す主な要件は次のとおりです。
- 改ざん防止のための措置をとる
- 「日付・金額・取引先」で検索できるようにする
- ディスプレイやプリンタ等を備え付ける
検索は、規則的なファイル名を付ける方法や、表計算ソフトで索引簿を作る方法で対応できます。
国税庁の一問一答では、ダウンロードしなければ保存義務が生じないわけではなく、まとめてダウンロードする場合でも、その取引の日が属する年分中に保存する必要があるとされています。年末に向けて、請求書を年内にダウンロードして保存しておくと安心です。詳しい要件は領収書・電子データの保存にまとめています。
よくある勘違い
- 「リバースチャージは全員が申告する」:免税事業者、簡易課税、一般課税で課税売上割合95%以上の課税期間などでは申告が不要です。
- 「登録国外事業者は今も有効」:令和5年9月30日に廃止され、インボイス制度に移りました。
- 「請求書に消費税が載っていれば控除できる」:消費者向けの役務では、適格請求書の保存が要件です。簡易課税や2割特例・3割特例を使う場合など、扱いが異なる場合もあります。
- 「海外サービスは消費税と無関係」:電気通信利用役務の提供は、国外から行われても国内取引として課税されます。
- 「サブスクの科目は決まっている」:国税庁の説明にサービス名の指定はなく、用途に応じて選ぶことになります。
課税方式や課税売上割合によって、リバースチャージの申告が要るかどうかは変わります。自分の場合を判断しきれないときは、消費税の扱いを税理士に相談する方法があります。弥生の税理士紹介サービスは、条件に合う税理士を無料で紹介するサービスです。
税理士の探し方と費用の相場は、税理士の探し方と費用相場もあわせてご覧ください。
チェックリストと、まとめ
次の項目を順に確認してください。
- 自分は免税事業者か、課税事業者か
- 課税事業者なら、一般課税か簡易課税か
- 一般課税なら、その課税期間の課税売上割合は95%以上か
- 請求書に日本の消費税が載っているか
- 請求書に「T+13桁」の登録番号があるか
- 公表サイトで番号を入力し、名称が発行元と一致するか
- 登録年月日より前の請求書でないか
- 契約が事業者向けか消費者向けか
- 勘定科目を決め、同じ扱いにそろえているか
- 請求書PDFを年内にダウンロードして保存したか
リバースチャージは、課税事業者のうち限られた場合の手続きです。多くの場合は、請求書の消費税と登録番号の確認、勘定科目の選択、電子データの保存が実務の中心になります。個別の判断は税理士や税務署にご確認ください。