結論:費用は「依頼の範囲」で決まる。目安額は出典を見て読む
個人事業主が税理士に払う費用は、毎月の顧問契約にするのか、確定申告だけを頼むのか、記帳(帳簿づけ)まで任せるのかで大きく変わります。「相場はこれ」と一つの金額で言い切れる性質のものではありません。
この記事では、弥生株式会社とfreeeが自社サイトで公表している目安額を、出典と更新時期を明記して紹介します。あわせて、費用がどんな要素で決まるのか、見積もりをどう比べればよいかを整理しました。
先に注意しておくと、ここで紹介する金額は各社の解説ページが示す目安であり、公的機関の統計ではありません。実際の金額は事務所ごとの料金表と見積もりで決まります。
費用の形は3種類に分かれる
税理士への報酬は、大きく次の3つの形に分けて考えると整理しやすくなります。
| 依頼の形 | 払い方 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 顧問契約 | 月額(毎月)+決算・申告料(年1回) | 毎月の相談や記帳チェック、年1回の申告 |
| 確定申告のみ(スポット) | 年1回の単発 | 1年分の資料を渡して申告書を作ってもらう |
| 記帳代行 | 月額または年額 | 領収書や通帳をもとに帳簿を入力してもらう |
たとえば、顧問契約でも「決算・申告料」は別料金になる事務所があります。月額だけを比べると、年間の総額で逆転することがあるため、見積もりでは1年間の合計で比べてください。
確定申告だけを頼む場合の進め方は、確定申告だけ税理士に頼む費用と流れで詳しく説明しています。
公表されている目安額を出典つきで見る
ここからは、実際に読んだ解説ページの数字を、そのまま出典つきで並べます。
顧問料(月額)
弥生株式会社の解説(2026年1月30日更新)では、個人事業主の月額顧問料は次のように示されています。
- 記帳代行なし:1万円から
- 記帳代行あり:3万円から
freeeの解説(2023年2月22日更新)では、月額顧問料の一般的な相場を月2万〜3万円としています。更新が古いため、参考程度にとどめてください。なお、freeeのページも具体的な調査の出典は示していません。
決算・確定申告の費用
弥生株式会社の同じ解説では、決算・確定申告の費用を次のように説明しています。
- 顧問契約なしの場合:15万〜25万円程度
- 顧問契約ありの場合:月額顧問料の4〜6倍が相場(月額3万円なら12万〜18万円が目安)
一方、弥生株式会社の別の解説(2026年1月29日更新)では、確定申告の依頼について、個人事業主・フリーランスの年間費用を「おおよそ5万円から10万円程度」としています。売上別の目安は次のとおりです。
| 売上の規模 | 確定申告の代行(弥生の目安) |
|---|---|
| 500万円以下 | 年8万円程度 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 年15万円程度 |
| 1,000万円超 | 15万円以上 |
同じ会社の解説でも、5万〜10万円という数字と、15万〜25万円という数字が並びます。依頼する範囲(記帳済みの資料を渡すだけか、整理から任せるか)や、売上の規模によって前提が違うためと考えられます。この幅の大きさ自体が、「相場だけで判断せず見積もりを取る」理由になります。
記帳代行の費用
弥生株式会社の解説(2026年1月29日更新)では、記帳代行と確定申告をあわせて依頼する青色申告の場合、売上500万円以下で10万円程度、売上1,000万円以下で15万円程度としています。記帳代行だけを依頼する場合は、売上500万円以下で5万円程度、1,000万円以下で7万円程度です。白色申告は、費用の総額が10万円未満に収まるケースが大半だと説明されています。
また、記帳を自分で行えば、その分の費用を抑えられるとも説明されています。毎月の入力を自分で続けられるかは、費用を左右する大きな分かれ目です。
日本税理士会連合会の調査について
日本税理士会連合会は、税理士を対象に「税理士実態調査」を実施しており、第7回(令和6年4月実施)の報告書を2025年2月に公表しています。ただし報告書は会員専用で、無断の転載を禁じる旨が案内されています。そのためこの記事では、同調査の報酬額は引用していません。
紹介サービスを使うか迷う場合は、税理士紹介サービスの比較で、費用・流れ・断りの代行を5サービス分、公式の情報で並べています。
個人事業主から会社にするか迷っている場合は、判断の目安・メリットとデメリット・手続きの流れを個人事業主の法人化(法人成り)にまとめています。
費用が高くなる・低くなる要素
目安額が幅を持つのは、費用が次のような要素で決まるためです。弥生株式会社の解説でも、費用は依頼内容や件数、従業員数、仕訳数などで変わると説明されています。
- 売上規模・取引の量:仕訳(帳簿に記録する取引)の数が増えるほど、作業が増えて費用も上がりやすくなります。
- 記帳を誰が行うか:自分で記帳して渡せば低く、丸ごと任せれば高くなります。
- 青色申告か白色申告か:青色申告で最大65万円の控除を受けるには、正規の簿記で貸借対照表と損益計算書を作る必要があります(国税庁「青色申告特別控除」で確認できます)。その分、作業量と費用に差が出ることがあります。
- 消費税の申告の有無:消費税の申告が必要な場合、別料金になる事務所があります。
- 訪問・面談の頻度:毎月の訪問か、オンラインや年数回の面談かで変わります。
- 相談の範囲:節税や資金繰りの相談まで含めるか、申告だけかで変わります。
見積もりを取るときは、上のうち自分に当てはまる点をあらかじめ書き出し、どの事務所にも同じ条件で伝えてください。比べる土台がそろいます。
見積もりを同じ条件で比べる方法
金額だけを並べても、含まれる業務がずれていると正しく比べられません。次の手順で比べると、後から追加料金に驚くことが減ります。
- 依頼したい範囲(記帳・申告・相談)を決める
- 前年の売上の概算と、仕訳数のおおよその量を用意する
- 2〜3事務所に同じ条件で見積もりを依頼する
- 「月額+決算料+追加料金の条件」を、1年間の総額にそろえて並べる
- 契約期間と解約の条件を書面で確認する
契約前の確認項目は、税理士の探し方にチェックリストとしてまとめています。
費用を抑えたいときの考え方
費用を下げる方法として、まず検討したいのは「自分でできる部分を増やす」ことです。たとえば会計ソフトで日々の記帳を自分で行い、税理士には申告だけを頼めば、記帳代行の分は抑えられます。会計ソフトの選び方は、開業時の会計ソフトの選び方で解説しています。
ただし、費用の安さだけで選ぶのはおすすめしません。申告の内容が適切か、相談に答えてもらえるか、連絡が取りやすいかも、1年を通して見ると大きな差になります。
なお、税理士に頼まず自分で申告すること自体は問題ありません。国税庁は、税理士でない人が他人の確定申告書を業として作成することは税理士法で禁止されていると案内しています。自分の申告書を自分で作る場合は、この禁止の対象ではありません。
状況別に、どの形が向くか
金額ではなく「何を任せたいか」から考えると、選ぶ形が絞れます。次の表は、典型的な状況ごとの考え方の目安です。
| 状況 | 向きやすい形 | 理由 |
|---|---|---|
| 開業して間もなく、取引が少ない | 確定申告のみ(スポット) | 毎月の作業が少なく、年1回で足りることが多い |
| 記帳は会計ソフトで自分で続けられる | 申告のみ、または記帳チェックつきの顧問 | 記帳代行の分を省いて費用を抑えられる |
| 領収書の整理や入力に時間が取れない | 記帳代行を含む依頼 | 本業に時間を使える分、費用は上がる |
| 売上が増えて消費税や節税の相談が増えた | 顧問契約 | 年に何度も相談するなら、顧問のほうが使いやすい |
| 法人化を考えている | 顧問契約や相談のできる事務所 | 個人と法人の比較は、相談できる相手がいると進めやすい |
どの形でも、最初から1年分を決めてしまう必要はありません。まず確定申告だけ依頼し、やり取りの相性を見てから顧問契約に変える進め方もあります。
追加料金になりやすい項目
見積もりの月額や申告料が同じでも、次のような項目は別料金になることがあります。契約前に、含まれるかどうかを一つずつ聞いておくと安心です。
- 消費税の申告
- 年末調整や給与計算(従業員を雇っている場合)
- 資料の提出が遅れたときの対応や、修正申告
- 税務署からの問い合わせや税務調査への立ち会い
- 記帳の修正が大量に必要になった場合の手直し
「顧問料に含まれる業務の一覧」を書面でもらい、追加料金が発生する条件も合わせて確認してください。記載が曖昧な事務所には、質問して書面で回答をもらうのが確実です。
税理士に頼む前に自分で準備しておくと安い・早いこと
費用は、渡す資料の整い方でも変わります。次の準備をしておくと、作業が減って見積もりが下がることもあり、少なくとも打ち合わせは早く進みます。
- 売上や経費の記録を、会計ソフトや表計算ソフトで月ごとにまとめておく
- 領収書や請求書を、日付順に整理して保管する
- 事業用の口座やクレジットカードの明細を、1年分そろえる
- 前年の確定申告書の控えを手元に用意する(初めてなら開業届の控え)
- 控除に関する書類(保険料の控除証明書など)をまとめておく
確定申告の全体の流れは、個人事業主の確定申告の流れで整理しています。青色申告の承認申請と控除の条件は、青色申告承認申請書の書き方にまとめています。
税理士の見つけ方に迷うとき
「費用の目安は分かったが、どの事務所に聞けばよいか分からない」という場合は、紹介サービスを使う方法もあります。弥生の税理士紹介サービスは、公式サイトで「紹介完全無料」と案内されています。全国のパートナー会計事務所から、条件に合う税理士を紹介してもらえる仕組みです。
申し込みは、弥生の「起業・開業ナビ」の税理士紹介サービスから行います。紹介されるのは事務所の情報で、契約するかどうかは自分で決められます。条件が合わなければ、ほかの事務所の見積もりと比べて選ぶのも一つの方法です。
申し込みの流れや対応エリアなどの詳細は、公式サイトで確認してください。
よくある疑問
開業直後は顧問契約にするべきですか
開業直後は取引が少ないため、まず確定申告だけを依頼し、事業が大きくなってから顧問契約に切り替える人もいます。毎月の記帳や相談が必要かどうかで決めてください。
税理士に依頼する前にそろえる資料のリストを、そろえ帳で自作のテンプレート集(note・300円)にまとめています。同じリストを複数の事務所に見せて、見積もりを比べる使い方もできます。 確定申告の準備テンプレート集(note)
まとめ
- 費用は「顧問契約」「確定申告のみ」「記帳代行」で形が違い、1年間の総額で比べる
- 弥生株式会社の解説(2026年1月更新)では、顧問料は記帳代行なしで月1万円から、ありで月3万円から
- 確定申告のみの目安は、出典や条件によって5万円台から25万円程度まで幅がある
- 費用は売上・仕訳数・記帳の担当・消費税の有無・訪問頻度で決まる
- 迷ったら、同じ条件で2〜3事務所から見積もりを取って比べる