資金調達の方法は性質が違う|個人事業主はまず使い道で選ぶ
資金調達の方法は、融資・制度融資・補助金・ファクタリングで性質がまったく異なります。使い道(開業・入金待ち・設備)から選ぶのが基本です。
日本政策金融公庫などの融資は返済が必要です。申込から決定までは「平均的には、3週間程度」と公庫の創業のFAQにあります。
制度融資は自治体・信用保証協会・金融機関が関わるため、時間が長くかかります。補助金は原則返済不要ですが、審査があり後払いです。
ファクタリングは売掛債権の売却で、入金待ちのつなぎ向きです。ただし手数料が高いと資金繰りが悪化します。
| 手段 | ひとことで言うと | 向く場面の例 |
|---|---|---|
| 公庫の融資 | 借りて、月々返す | 開業、運転資金、設備 |
| 制度融資 | 自治体を通じた融資 | 開業前後で時間に余裕がある場合 |
| 補助金・助成金 | 原則返済不要、後払い | 対象となる事業を先に進められる場合 |
| ファクタリング | 売掛債権を売る | 入金待ちのつなぎ |
「資金調達 個人」で探している方も、考え方は同じです。個人事業主でも、使い道と時期から選べます。
資金調達の方法を比較する|個人事業主が知っておきたい4つの違い
次の表は、4つの方法を公式ページに書かれている範囲で比べたものです。書かれていない欄は「公式ページで確認できず」としています。
| 項目 | 日本政策金融公庫の融資 | 制度融資 | 補助金・助成金 | ファクタリング |
|---|---|---|---|---|
| 性質 | 政府系金融機関の融資 | 自治体・信用保証協会・金融機関が連携する融資 | 公的な資金。補助金は原則返済不要 | 売掛債権の売買 |
| 返済 | 原則月賦払い | 返済が必要。保証協会が代位弁済しても債務は免除されない | 補助金は原則不要 | 債権の売買契約(金融庁)。実態が貸付けに近いものは貸金業に該当するおそれ |
| 時間 | 平均的には3週間程度(公庫のFAQ) | 入金までの時間も長くかかる(J-Net21) | 採択後、通常数か月(ミラサポplus) | 各社の公式が「最短」の表記(即日入金の見方) |
| 向く場面 | 開業、運転資金、設備資金 | 開業前後の融資の相談 | 対象事業を先に進められるとき | 入金待ちのつなぎ |
| 注意 | 希望に沿えないことがある | 保証料が必要になる場合がある | 審査あり。交付決定前の発注は対象外 | 高額な手数料に注意 |
助成金は制度ごとに要件や時間が異なります。所管機関の公式ページで確認してください。
日本政策金融公庫の融資|新規開業・スタートアップ支援資金の内容
公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方が対象です。設備資金と運転資金の両方に使えます。
公式ページの表記は次のとおりです(2026年10月17日確認)。
- 融資限度額:7,200万円
- 返済期間(設備資金):20年以内(うち据置期間5年以内)
- 返済期間(運転資金):10年以内(うち据置期間5年以内)
- 担保・保証人:希望を伺いながら相談
- 利率:基準利率または特別利率(要件による)
審査の結果、希望に沿えないことがあります。返済は原則として月賦払いです。
申込は、インターネット申込(24時間365日受付)が利用できます。準備書類には創業計画書があり、設備資金なら見積書も求められます。本人確認書類も必要です。
手続きでは、資金の使い道や事業計画についての面談があり、店舗や事業所の予定地を訪ねる流れも示されています。
自己資金について、公庫のFAQは「それ以上に創業計画全体がしっかりしているか」が重要としています。公庫の新規開業実態調査では、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度と公表されています。調査の対象や年次は公庫の調査結果で確認してください。目安として一般化はできません。
手順や必要書類の詳細は、開業資金の目安と創業融資の手続きで解説しています。
制度融資は時間がかかる|自治体・信用保証協会が関わる仕組み
制度融資は、都道府県や市区町村が取り扱う融資です。J-Net21によると、信用保証協会の利用を条件とするものが多いとされています。
信用保証協会は、中小企業が金融機関から融資を受けるとき、債務保証をする制度です(中小企業庁)。
押さえておきたい点は次の4つです。
- 行政の予算から直接お金をもらうわけではなく、資金の出所は金融機関です。
- 行政・保証協会・金融機関が連携するため、実際の入金までの時間も長くかかります。
- 保証協会を利用する場合は、金利のほかに保証料が必要になります。
- 保証協会が代位弁済(本人に代わって支払うこと)をしても、事業者の債務は免除されません。返済は保証協会に対して続けます。
取扱内容は自治体ごとに異なります。事業所を置く(置く予定の)地域の窓口で、対象や手続きを確認してください。
補助金・助成金は返済不要でも後払い|個人事業主の注意点
補助金は、融資と異なり原則として返済の必要がないのが特徴です(ミラサポplus)。ただし、いくつか注意が必要です。
- 審査があり、「申請したら必ずもらえる」ものではありません。
- 事業の全額が補助されるとは限りません。
- 原則、後払い(精算払い)です。事業の実施後に必要書類を提出し、検査を受けてから受け取ります。
- 採択後に交付申請を行い、交付決定を経て初めて事業を開始できます。このプロセスには通常、数か月かかります。
- 採択通知の時点では発注できません。交付決定前の発注は対象外とされます。
つまり、事業を進める間の資金は別に用意する必要があります。補助金だけでは開業や設備購入の当面の支払いをまかなえません。
助成金は、制度ごとに要件も時間も異なります。所管機関の公式ページで確認してください。
ファクタリングは売掛債権の売却|入金待ちのつなぎ向き
ファクタリングは、売掛債権(まだ入金されていない代金を受け取る権利)を売却して、早めに現金化する方法です。金融庁は債権の売買として説明しています。
注意点は次の2つです。
- 実態が貸付けに近いものは、貸金業に該当するおそれがあるとされています。
- 高額な手数料が問題になることがあり、金融庁も注意を促しています。
手数料が高いと、手元に残る金額が減って資金繰りがかえって悪化します。入金額から差し引かれる額を、事前に計算してから判断してください。
仕組みはファクタリングとは、手数料の見方はファクタリングの手数料の見方、個人事業主の注意点は個人事業主がファクタリングを使うときの注意にまとめています。
カードローン・消費者金融は総量規制に注意
カードローンや消費者金融での借入れには、総量規制があります。日本貸金業協会によると、年収などを基準に、その3分の1を超える貸付けは原則禁止です。
個人事業者への貸付けも総量規制の対象です。クレジットカードのキャッシングも対象に含まれます。
ただし、事業実績や事業計画などに基づき、返済が合理的に見込まれて明らかに返済能力があると認められる場合は、例外的に借りられることがあります。
J-Net21は、ビジネスローンについて審査が早い一方で金利が高くなっている点を挙げ、必要最低限の金額をできるだけ短期で借りるよう勧めています。
状況別ガイド|あなたの場合はどの方法を検討するか
使い道ごとに、検討する手段を事実の範囲で整理します。順位はつけません。
開業前後の場合 公庫の創業融資と、自治体の制度融資が相談先になります。どちらも決定や入金までに時間がかかるため、開業時期から逆算して早めに相談します。
入金待ちで一時的に足りない場合 まず入金サイクル(請求から入金までの期間)の見直しを考えます。詳しくはフリーランスの入金サイクルと資金繰りを参照してください。そのうえで、ファクタリングや公庫の運転資金が選択肢になります。
設備投資の場合 公庫の返済期間は、設備資金(20年以内)のほうが運転資金(10年以内)より長く設定されています。J-Net21は「短期は運転資金、長期は設備資金」の考え方を示しています。補助金は後払いなので、先に支払うための資金が必要です。
申込む前のチェックリスト10項目
- 資金繰り表をつくり、必要額と必要な時期を出す(J-Net21)。
- 使い道を、運転資金と設備資金に分ける。
- 短期(1年未満)か長期(1年以上)かを決める。
- 返済計画を立て、月々の返済額を資金繰り表に入れる。
- 創業計画書や事業計画書を用意する。
- 設備資金なら見積書をそろえる。
- 本人確認書類を準備する。
- 申込から入金までの時間を確認し、支払い日から逆算する。
- 補助金なら、交付決定前に発注しないことを確認する。
- ファクタリングなら、手数料と実際の手取り額を事前に計算する。
資金繰り表は、入金予定と支払予定をまとめたものです。毎日の入金額と支出額を記録するだけで、お金の流れが分かります(J-Net21)。
次の一歩|資金計画を数字で整理したいときは税理士に相談する選択肢も
資金計画や事業計画を数字で整理したいときは、税理士に相談する選択肢もあります。融資や補助金の結果は税理士が保証するものではありません。
弥生株式会社の税理士紹介サービスは、条件に合う税理士を弥生が紹介するサービスです。資金計画の相談先を探す際の選択肢の一つとして、内容を確認できます。
まとめ|資金調達の方法は使い道と時期で選ぶ
資金調達の方法は、融資・制度融資・補助金・ファクタリングで、返済の有無と入金までの時間が異なります。
- 公庫の融資は返済が必要で、平均的には3週間程度(公庫のFAQ)。
- 制度融資は関係機関が多く、時間が長くかかる。
- 補助金は原則返済不要だが、審査があり後払い。
- ファクタリングは売掛債権の売却で、手数料に注意。
まず資金繰り表で必要額と時期を出し、使い道に合う手段を選びます。最新の条件は、各公式ページで確認してください。