結論:任期満了後に同じ人が続けて就任しても、変更登記を申請します
任期が満了して同じ人が続けて役員になるときも、変更登記(重任の登記)を申請します。期限は、登記の事由が生じてから2週間以内です。
自分で申請することもできます。本記事では、重任の意味、期限、費用、必要書類、申請方法の順に説明します。
なお、会社の形態や定款の定めによって手続きは変わります。最終的には管轄の法務局や司法書士に確認してください。
重任とは何か、なぜ登記が必要なのか
重任とは、任期が満了する役員が、そのまま続けて同じ役員に就任することです。顔ぶれが変わらなくても、いったん任期が終わって新しい任期が始まるため、登記の対象になります。
任期は会社法に定められています。取締役の任期は、会社法332条により、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。
ただし、定款または株主総会の決議で、任期を短縮することもできます。
また、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社を除く)では、定款で任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸ばせます。
監査役の任期は、会社法336条1項により、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。
つまり、あなたの会社の任期が何年かは、定款を見ないと決まりません。まず定款の役員任期の条文を確認し、直近の就任日と照らし合わせてください。
登記が必要な理由は、会社法915条1項にあります。登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならないとされています。
あなたの場合の分岐は次のとおりです。
- 取締役が1人だけの会社:その1人の重任を登記します。
- 取締役会を置いている会社:取締役、代表取締役、監査役のうち、任期が満了する人が対象になります。
- 一部の役員だけが重任し、他は新任・退任する場合:別の記載例になります(後述)。
期限と過料:2週間以内、遅れても申請はできる
期限は、登記の事由が発生した時から2週間以内です。法務局の案内でも、株式会社の役員変更登記は本店の所在地で2週間以内にしなければならないとされています(会社法911条)。
起算日にあたる「事由が生じた日」は、会社の定款や決議の内容によって変わります。迷うときは法務局に確認してください。
期間を過ぎてしまった場合でも、そのことだけで申請が却下されることはないと、法務局は案内しています。遅れていても、気づいた時点で申請するのが基本です。
ただし、登記を怠ったときは、会社法976条により、取締役・監査役・代表取締役などが100万円以下の過料に処される場合があります。法務局も、裁判所から代表者に過料が科される可能性があると案内しています。
過料が実際に科されるかどうかや金額は、個別の事情で異なります。ここでは「期限を過ぎると過料の可能性がある」という点を押さえてください。
任期満了日の目安を決算期ごとにカレンダーへ入れておくと、うっかり忘れを防げます。
登録免許税:1万円または3万円
登録免許税は、登記の申請時に国へ納める税金です。取締役、代表取締役、監査役などに関する事項の変更の登記は、1件につき3万円です。資本金の額が1億円以下の会社は1万円です。
出典は国税庁の税額表(令和8年4月1日現在法令等)で、確認日は2026年10月17日です。
法務局の記載例でも、資本金が1億円を超える場合は3万円、1億円以下の場合は1万円とされ、収入印紙または領収証書で納付します。
| 資本金の額 | 登録免許税(1件につき) |
|---|---|
| 1億円以下 | 1万円 |
| 1億円を超える | 3万円 |
どちらに当たるかは、ご自身の会社の登記簿上の資本金で判断してください。
役員の変更に伴い、本店移転や代表取締役の住所変更など別の登記も同時に行う場合は、費用が増えることがあります。まとめて見積もる場合は、変更登記の費用計算ツールが参考になります。
重任登記の必要書類(取締役会設置会社・全員重任の例)
法務局の記載例(取締役会設置会社で役員の全員が重任する場合)では、登記の事由は「取締役、代表取締役及び監査役の変更」です。登記すべき事項には、原因年月日と「重任」を記載します。
添付書類は、この記載例では次のとおりです。
| 書類 | 通数 | 備考 |
|---|---|---|
| 株主総会議事録 | 1通 | 役員を再任する決議の内容を記載 |
| 株主リスト(株主の氏名または名称、住所、議決権数等を証する書面) | 1通 | |
| 取締役会議事録 | 1通 | 代表取締役の選定を取締役会で行った場合の例あり |
| 就任承諾書 | 必要な人数分 | 議事録に就任承諾の記載があれば別途不要 |
| 委任状 | 1通 | 代理人に申請を委任した場合のみ |
就任承諾について、被選任者が席上で就任を承諾し、その旨が議事録に記載されている場合は、申請書に就任承諾書を別途添付する必要はないと注記されています。
また、議事録に、代表取締役が登記所に提出している印鑑が押されていない場合は、出席した取締役・監査役全員の実印と印鑑証明書が必要になる旨の注記もあります。
このほか、契印や収入印紙の貼付台紙についても、記載例に注意書きがあります。
書類は会社の形態で変わります。取締役会を置いていない会社には別の様式があり、法務局の申請書様式のページで確認できます。
役員の一部だけが重任し、ほかの役員が新たに就任する場合は、「辞任等により新たな役員が就任した場合」の記載例になります。印鑑届書などが必要になる場合もあるため、該当する場合は様式ページで確認してください。
自分で申請する方法と流れ
自分で申請する方法は、大きく3つあります。法務局は「登記の申請方法には、オンライン申請と書面申請の2つがあります」と案内しています。
| 方法 | 概要 |
|---|---|
| 登記・供託オンライン申請 | インターネットで申請する。利用時間は平日8時30分〜23時00分、休日8時30分〜18時00分(12月29日〜1月3日を除く) |
| QRコード付き書面申請 | 申請用総合ソフトで作った申請書を事前送信し、印刷して登記所に提出する。電子証明書がなくても利用でき、郵送も可能 |
| 窓口・郵送の書面申請 | 書面で作成し、管轄の法務局に持参または郵送する |
処理状況をパソコンで確認できるのは、オンライン申請とQRコード付き書面申請です。
流れは次のとおりです。
- 定款で役員の任期と、取締役会・監査役の有無を確認する。
- 株主総会(必要に応じて取締役会)を開き、議事録を作る。
- 株主リスト、就任承諾書(必要な場合)などの添付書類をそろえる。
- 法務局の様式と記載例を使って、役員変更登記申請書を作る。
- 登録免許税を収入印紙または領収証書で納める。
- 本店所在地を管轄する法務局へ、選んだ方法で申請する。
書類の作成方法など登記の手続について不明点があれば、管轄の登記所(法務局)に問い合わせられます。
代表取締役の住所が変わっている場合は、代表取締役の住所変更登記も確認してください。本店を移す予定があれば、本店移転登記の記事も役立ちます。設立後に必要な手続き全体は、設立後の手続き一覧にまとめています。
書類作成の手間をどう考えるか
重任登記は、議事録、株主リスト、申請書など、複数の書類を整合させて作る必要があります。慣れていないと、日付や役職名の記載で時間がかかることがあります。
書類を自分で作ることはできます。この記事で手順を説明したとおり、法務局の様式と記載例を使えば作成できます。
一方で、書類作成を補助するサービスを使う選択肢もあります。その1つにGVA法人登記があります。
自分で作るか補助を受けるかは、かけられる時間と、書類の作成にどこまで手を動かしたいかで決められます。サービスの料金や使い方はGVA法人登記の料金と使い方で説明しています。
比較するときは、対応する登記の種類、書類作成の範囲、申請まで任せられるかどうか、費用の内訳を確認すると判断しやすくなります。
注意:定款の定め・許認可・会社の状況で異なります
ここまでの内容は、公式の記載例(取締役会設置会社で役員全員が重任する場合)が中心です。実際の必要書類は、会社ごとの事情で変わります。
確認すべき主な点は次のとおりです。
- 定款に定められた役員の任期と、取締役会・監査役の有無
- 役員の全員が重任するのか、一部が入れ替わるのか
- 業種によっては、許認可の届出で役員変更の手続きが別に必要な場合があること
- 議事録に押す印鑑と、必要になる印鑑証明書
どの様式を使うべきか迷うときは、管轄の法務局に確認してください。判断が難しい場合や、ほかの登記も重なる場合は、司法書士に相談する方法もあります。
期限は2週間と短いため、任期満了の時期を決算期に合わせて早めに把握しておくと、落ち着いて準備できます。