結論:マイクロ法人は「小さな法人」の通称で、義務も費用も通常の法人と同じ
マイクロ法人は、小規模に運営する会社を指す通称です。この記事では、ひとりで運営する小さな法人の意味で使います。
法人である以上、設立登記、決算・法人税の申告、社会保険の加入、法人住民税の均等割などの義務と費用が生じます。小さいから義務が軽くなる制度は、この記事で扱う範囲にはありません。
向くかどうかは、個人の状況で変わります。仕組みと義務を知ったうえで、税理士や年金事務所に確認するのが現実的な進め方です。
マイクロ法人とは
マイクロ法人は、一般に小規模な法人を指して使われる呼び方です。公的な定義があるとは確認できていないため、「何円以下」「何人以下」といった基準も、この記事では示しません。
法人としては、通常の株式会社や合同会社と同じ扱いです。規模による特別な区分は、この記事で確認した国税庁・日本年金機構・東京都主税局のページ(社会保険の加入、法人税率、均等割の税額表の範囲)には出てきません。
つまり「マイクロ法人をつくる」とは、実際には「ひとりで運営する小さな株式会社や合同会社をつくる」ことです。ルールは通常の法人のものがそのまま当てはまります。
あなたの場合は次のように考えてください。
- 会社員で副業中の人:副業の事業を法人名義で行うかどうかが論点になります。勤め先の就業規則も確認が要ります。
- 開業届を出した個人事業主:個人事業を続けるのか、法人に移すのかを選ぶ段階です。判断の全体像は個人事業から法人化する判断の記事にまとめています。
- これから独立する人:最初から法人で始めるか、個人で始めるかを比べることになります。
仕組み:個人と法人は別の人格として扱われる
法人は、あなた個人とは別の存在として扱われます。お金の流れも別々に考えます。
- 取引先からの売上は、法人の収入になります。
- 法人は、そこから経費や役員報酬を支払います。
- 法人の利益には、法人税などがかかります。
- 役員報酬を受け取る個人には、個人としての所得の課税が別にあります。
法人税の税率は、国税庁によると資本金1億円以下の法人などで、年800万円以下の部分が15%、年800万円超の部分が23.20%です(国税庁 No.5759、2026年10月17日確認)。このほか地方の税も別にかかります。
個人の事業のお金と法人のお金は、分けて管理します。法人の口座、法人名義の契約、法人の帳簿を用意する流れになります。
マイクロ法人でできること
一般論として、法人ができることは次のとおりです。
- 事業を法人名義で行う(取引先と法人として契約する)
- 法人から役員報酬を受け取る
- 法人名義で銀行口座を開く
- 法人名義でオフィスや各種サービスの契約をする
ただし、何をどの名義で行うかは、実際の事業の内容に沿って決めます。個人の事業をそのまま法人に移すには、契約の切り替えや取引先への連絡も要ります。
また、法人ができるのは「事業」です。事業の実態を伴う運営が前提です。次の節で触れる規定の扱いも含め、個別の判断は専門家に確認してください。
注意点・義務:実態のある事業が前提
マイクロ法人のデメリットにあたるのは、主に次の義務と費用です。いずれも実態のある事業を行っていることが前提になります。
社会保険の加入義務
日本年金機構の案内では、厚生年金保険の適用事業所になるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)とされています。すべての法人事業所(事業主のみの場合を含む)は、厚生年金保険・健康保険の両制度に加入します(2026年10月1日更新のページ)。
新規適用の手続きは法律で義務づけられており、提出時期は事実発生から5日以内です。設立してすぐ動く必要があります。
決算と法人税の申告
法人税の確定申告書は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に出します(国税庁、2026年10月17日確認)。売上の規模にかかわらず、決算書類を作って申告する流れになります。詳しい要件は国税庁で確認してください。
法人住民税の均等割
均等割は、所得ではなく資本金等の額と従業者数の区分で定まる税額表に基づく税です。自治体によって異なるため、設立する場所の資料を確認してください。
同族会社の行為計算の否認
法人税法132条は、同族会社などについて次のように定めています。
税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
対象には、内国法人である同族会社が含まれます(第一号)。適用されるかどうかは個別の判断になるため、ここでは条文の紹介にとどめます。同族会社に当たるかは、税理士や税務署に確認してください。
消費税
新たに設立された法人は、設立1期目と2期目は原則として納税義務が免除されます。ただし、例外に該当する場合や、適格請求書発行事業者になった場合は、免除されません(国税庁 No.6503、2026年10月17日確認)。
設立と維持の費用
費用は、設立時に一度かかるものと、毎年かかるものに分かれます。
| 区分 | 項目 | 公式情報にもとづく内容 |
|---|---|---|
| 設立時 | 株式会社の登録免許税 | 資本金の額の1,000分の7(15万円に満たないときは15万円) |
| 設立時 | 合同会社の登録免許税 | 資本金の額の1,000分の7(6万円に満たないときは6万円) |
| 毎年 | 法人住民税の均等割 | 東京23区のみに事務所、資本金等1千万円以下・従業者50人以下の例で年70,000円 |
| 毎年 | 決算・申告の費用 | 税理士に頼む場合は報酬が発生 |
| 毎月 | 社会保険料 | 厚生年金保険料率は18.3%で、被保険者と事業主で折半 |
登録免許税は国税庁 No.7191、均等割は東京都主税局の税率表、保険料は日本年金機構のページによります(いずれも2026年10月17日確認)。設立時には定款の作成費用なども別にかかります。内訳は会社設立費用の内訳の記事で確認できます。
社会保険料は、標準報酬月額に保険料率を乗じた額を折半する仕組みです。実際の金額は報酬額などで変わるため、ここでは試算しません。
決算・税理士の費用の目安は、税理士費用の相場の記事を参照してください。
法人にした場合の税金や社会保険は、個人の収入や家族構成などの数字で変わります。設立の前に、税理士へ試算を相談しておく方法があります。
税理士の探し方に迷う場合は、紹介サービスも選択肢です。弥生の税理士紹介サービスは、申込みが無料とされています。弥生の税理士紹介サービスの公式サイトを確認する
複数のサービスを比べたい方は、税理士紹介サービスの比較も参考になります。
向いている人・向かない人
一律に決められる基準はありません。次の条件を目安に、自分の状況に当てはめてみてください。
検討の余地がある人
- 個人の事業を、法人名義で継続的に行える
- 社会保険料、決算費用、均等割を毎年維持できるか見積もれる
- 契約の切り替えや帳簿の分離など、法人の事務を続けられる
- 税理士や年金事務所に相談して、自分の数字を確認する用意がある
慎重に考えたい人
- 事業の実態がなく、法人をつくること自体が目的になっている
- 売上が不安定で、毎年の固定的な費用を見積もれない
- 勤め先の副業ルールを確認していない
- 手続きや書類の管理に時間を割けない
当てはまる項目が少なくても、状況が変われば判断も変わります。個人のままでいる選択も、同じく自然な選択肢です。
法人をつくったらそろえるもの
設立後は、次のものを順にそろえていきます。
- 法人口座:法人名義の口座の開設を進めます。法人口座のネット銀行を比較するで比較軸を確認できます。例として、ラクスルバンクの法人口座開設を公式サイトで確認することもできます。
- 住所:登記に使う住所を決めます。自宅住所を出したくない場合は、バーチャルオフィスの比較が参考になります。
- 設立後の届出:税務署、年金事務所、自治体への届出があります。設立後の手続き一覧で漏れを確認してください。
設立手続きそのものは、オンラインでの設立登記の記事と電子定款の作り方が参考になります。
注意:制度は変わり、自治体でも異なる
この記事の数値や条件は、2026年10月17日に確認した公式ページにもとづきます。税率、保険料率、税額表は改正されることがあります。
均等割などの地方税は、自治体によって取り扱いが異なります。東京都以外で設立する場合は、その自治体の資料を確認してください。
最終的な判断は、税理士、年金事務所、税務署への確認で固めてください。この記事は、その相談の前に論点をそろえるための整理です。